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1月 04

053IT関連で保守契約が必要な理由~その2

前回記事ではIT関連保守契約の必要性に関する基本事項を整理した。今回は、保守契約について、ユーザー企業にとっての要件と、ITベンダーの事情について考察してみたい。

□ 保守契約検討の5要素
前回挙げた保守契約検討の5つの要素とは以下のようなものであり、ユーザー企業にとってのシステム運用管理における基本的な要件とも対応する。
(1)障害時にも復旧できる手段の確保
(2)迅速に復旧するため
(3)業務、環境の進化に対応するため
(4)障害を起こさないため(システム変更検討時のリスク確認のため)
(5)上記をトータルで経済的に実現するため

□ 「障害時にも復旧できる手段の確保」とは
システム障害はなるべく起こしたくはないが、発生したら少しでも早い復旧をしたい。このために運用管理に携わる者としては、インシデント管理や問題管理といったプロセスを充実させるのだが、「ここが壊れたら復旧できない」という部分は最低限でも無くさなければならない。

代表的なものとしては、①旧式で修理の効かないサーバーの故障、②ソースプログラムがない個別開発システムのソフトウェア障害、③開発者や保守対応者がいない個別開発システムのソフトウェア障害、などが挙げられる。
こうなる前に対応しなければならない訳だが、保守契約の意識がなく、担当者が退職や異動で入れ替わったりする場合に、結果としてこのようなことになっていることがある。

①については、サーバーなどの重要ハードウェアは必ず保守契約を結ぶこととし、適度なタイミングで新しい機種に入れ替えることで保守契約が結べる状態を確保する必要がある。
②、③については、個別開発で業務システムを構築した場合には、社内要員による開発であれば開発管理体制を十分確立することだが、外部委託による開発の場合は保守契約を締結することをユーザー企業のニーズとして進めなくてはならない。

□ 「迅速に復旧するため」にすべきこと
個々の情報システムによって復旧迅速性のニーズは異なるはずであり、先ず、そこを明らかにする。
サービスレベル管理をはじめると必ず考慮することになるのだが、「障害回復時間」(障害が発生したときの回復までの平均時間)として定義し、目標の要求水準をたとえば「6時間」と定義する。このような形でシステム毎に要求水準を明らかにするのだ。

その上で、ハードウェアであれば「24時間当日オンサイト保守」とか、「平日9時-17時、翌日オンサイト」などの条件で保守契約を締結する。もちろん、条件により料金は異なる。

ソフトウェアについても対応時間帯、着手までの時間を条件に保守契約を考えるべきだが、契約相手となるベンダー側の事情もあり、大企業が通常の契約相手であるハードウェア保守のようにすんなりと金額との関係で決められないこともある。こちらはできるだけシステム導入に先立つ調達プロセスの際に、保守契約条件も入れたRFP(提案依頼書)として、本番稼働後の保守レベルについても評価するようにしたい。

□ 「業務、環境の進化に対応するため」にすべきこと
成長著しい分野の業務の場合、一旦構築したシステムでも機能追加、変更が多く発生する。中には経営者や業務担当者が「すぐに対応して欲しい!!」と最高度の優先度で迫るものもある。さほど変化のない業務でも、制度変更対応などでのプログラム変更が必要な場合もある。
また、サーバー機の新機種入れ替えのためにOSバージョンアップが必要になり、そのための業務プログラム変更が必要となることも考慮しなければならない。

外部委託で開発をしたシステムの場合、ITベンダーが引き受けてくれることがプログラム変更実施の前提となる。業務システムの保守契約を締結していないと、ベンダー側の事情によっては、すんなりと変更を引き受けてもらえない可能性もあるので注意を要する。また、緊急の変更対応のためには、保守契約を締結して、一定工数(※ベンダー側要員の時間)を定額で確保しておくことも方策である。

□ 「障害を起こさないため(システム変更検討時のリスク確認のため)」とは
1つのシステムをOS設定からアプリケーションプログラム開発までを1つのベンダーに委託して、保守も依頼する場合には問題にならないが、異なるベンダーが開発した関連する複数システムが連携する場合、1つのシステムの変更がシステム間連携に支障をきたす場合もある。

このような場合、主たる変更のシステム設計時に、関連するシステム連携に問題無いかどうかを確認しておかないと、テストや本番稼働の際に、設計の不具合で障害となってしまうことがある。
連携して動くシステムで問題が無いかを、設計段階で確認してもらうことも、追加料金が必要かどうかは契約内容によるが、保守契約を締結していれば可能である。

□ 「上記をトータルで経済的に実現するため」には
上記の4条件は、経済性は抜きにしてユーザー企業として必要なものである。
無条件ですべての保守契約を締結すればいいかといえばそうではない。保守契約にも「サービスレベル」という条件があり、サービスレベルによって料金も異なってくるし、システムの位置づけによっては保守契約が必要ないものもあるかもしれない。
企業における基本的なスタンスとしては、以下のようなものが妥当なところだと思われる。

(1)基本的には保守契約締結を考える
(2)システムの障害対応の要求水準、変更の頻度に応じて条件を決めるが、よく分からない場合は、先ずは最低限の条件での締結をし、定期的にこれを見直す
(3)システム導入の際に、保守の条件も考慮に入れる

以上、ユーザー企業の要件としての5つの要素をみてきた。これによって、少しでも保守契約の必要性検討の参考になれば幸いである。
(2012.6.14 執筆:山田 一彦)