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1月 04

052IT関連で保守契約が必要な理由~その1

IT機器や情報システムを導入すると、稼働後の保守に関する契約の締結要否を決めなくてはならないことが多い。保守契約の費用は、初期の導入費用とは別のランニング費用となる。本当に必要な契約ならば締結して費用を払うのも納得できるが、「もったいない」ような気がすることもある。
どんな時に必要で、何の役に立つのかを理解した上で検討することをお勧めしたい。

□ ここで「保守契約」と呼ぶもの
ここで言う「保守契約」は、購入、開発、初期設定を終えて、本番稼働開始以後に必要となるITベンダーなどとの契約のことを呼ぶこととする。「保守契約」のほか、「サポート契約」などの名称で呼ばれることがある。
ハードウェア、製品ソフトウェア、個別に開発したソフトウェア、システム環境管理などに関するものが主なものだ。

□ 保守契約は必要ないか?
もっともシンプルな個人用パソコンの例で考えてみよう。
パソコンを購入すると1年間の保証が付いてくる。故障したら製造元に送ると修理してくれたり、別の新品に取り替えてくれたりする。2年目以降は、保守契約をすれば1年目と同様の対応となる。契約をしなければ故障時はかかった費用を支払うことになる。

故障するかどうか分からないのに、あらかじめお金を払うのはもったいないというなら、保守契約はしないでおいて、故障したらその都度、費用を支払って修理してもらうというのも一つの選択だ。しかし、実際に故障したら、保守契約で払う金額よりも高くつきそうだとか、すぐに対応してもらえないかもしれないという心配があるのであれば保守契約をすればいい。

個人所有の機器の場合はこのように考えればよさそうだ。

□ 企業ITの保守契約は経済面だけではない配慮が必要となる
企業で使用する情報システムの場合はどうだろうか。
企業で使用するIT機器や情報システムは、ものによって重要度が違う。有料の顧客向けシステムと、社内特定部門向けの利便性向上のためのシステムでは、障害発生時の復旧までの要求時間は大きく異なるだろう。更に、機器やシステムの元々の信頼性や変更の頻度によって障害の頻度も異なる。
企業におけるIT関連の保守契約を考える場合は、これらを考慮する必要がある。

□ 保守契約検討の前に確保すべき「復旧可能性」
企業のIT機器や情報システムは、「なくても良い」ようなものは原則無いはずである。どのような形であれ、稼働し利用者が存在するのであれば「無くなったら困る」はずであるし、障害が発生したら時間がかかっても元通りに復旧しなければならないはずだ。

しかし、一旦障害となると復旧できないケースもある。たとえば、メーカーが製造停止し、修理部品も存在しない旧式サーバーで稼働しているシステムは、サーバーが故障すると復旧できる見込みは低い。新しいサーバーを購入してもソフトウェアが動かない可能性が高いからだ。この場合、保守契約はITベンダー側がしてくれない状態となっていたはずだ。

情報システムの運用管理において、最低限確保しなければならないのは、障害時の「復旧可能性」を確保しておくことなのである。その観点からすれば、保守契約をしてもらえないような機器や情報システムは稼働させるべきではない。「復旧可能性」がなくなる前に何らかの対策を講じておくべきなのである。

□ 保守契約を考慮しないで生じた問題事例
保守契約を検討する上で、次のような事例もあることも考慮に入れる必要がある。

(1)買い換えの方が安くつく機器故障の修理見積り
某企業で、こんな事例があった。
2年ほど前に導入したテープ装置が故障した。購入先ベンダーに訊くと、1年間の保証は切れており、2年目以降の保守契約はないという。ある程度の出費は覚悟して修理を製造元に依頼すると、対応のための訪問は2週間後、見積り金額はなんと装置購入金額の3倍超とのこと。まだ同じ製品が販売されているので間違いではないかと再確認したが、間違いないという。
結局、新たな同機種を購入してセットアップすることで対応したが、今度は保守契約締結を忘れずに、しっかりとおこなった。

(2)保守契約をしてもらえない業務システム
ハードウェアからアプリケーション開発まで委託した重要システムの事例。
導入当初の不具合対応など、ベンダーは義務を完璧に果たして安定稼働に入った。
アプリケーションの保守契約は締結せずに1年が経過したのち、少々大きな障害が発生した。開発元ベンダーに対処を依頼するが、開発したエンジニアが遠隔地に異動となってしまっており、対応にはかなりの時間を要した。もちろん、費用は個別に必要となる。
その後発生した障害でも同様の対応となった。ベンダーは誠実に対応してはくれるが、とにかく、対応着手、完了までの時間が長い。
このシステムの保守契約の締結を依頼するが、ベンダーとしては現実的に難しいようで、数年経過後も締結には至っていない。

□ 保守契約を検討するための要素
保守契約については、経済的な側面だけではなく、以下のような要素を考慮した上で結論を出すといいだろう。優先度が高いと思われるものから挙げてみた。
(1)障害時にも復旧できる手段の確保
(2)障害時に迅速に復旧するため
(3)業務、環境の進化に対応するため
(4)障害を起こさないため(システム変更検討時のリスク確認のため)
(5)上記をトータルで経済的に実現するため

次回はこれらを、ユーザー企業のニーズにそって、ITベンダーの事情等を踏まえて具体的に考えてみたい。
(2012.6.12 執筆:山田 一彦)