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1月 04

037IT要員育成手段は目的達成に即したものを効果的に使おう

中小企業におけるIT要員能力の育成には多様な手段がある。個人の能力向上が組織のIT活用力にも直結するので個人任せにせず、会社として計画し、しっかりとバックアップしていきたい。

□ 人材育成への会社としての取り組み姿勢
新卒、階層別の人材育成体制が完備している大企業とは異なり、中小企業では実務のなかで育てていくOJT、あるいは、個別のスキルについては個人任せになっていることが多い。仕事で必要な能力は本人が意識して勝ち取っていくことが原則だが、例えば、IT活用で競争力を高めたいという会社の方針があるとすれば、それに沿った人材育成の方向付けをし、費用も含めたバックアップを会社がしていくのは当然といえる。会社が本気度を示すことで、社員の士気もあがり、IT活用成功のハードルも低くなるのである。

□ IT人材育成手段
人材育成には次のような手段がある。達成目標、達成時期、社内の状況、教育サービスの提供状況などを考慮して適切なものを選択する。

(1)OJT (On the Job Training)
職場における、実務を通じた人材育成である。システム運用、管理など、定常的におこなう業務の場合は効果的である。システムの計画や導入など、一過性の業務の場合は、経験者と共に実務を経験することで、体験的に学ぶ。
漫然と業務に従事させるのではなく、自らの向上目標を意識させ、達成を評価させるようにするといいだろう。

(2)研修、セミナー受講
Windows、Linux、プログラミング、設計などの技術的なテーマのほか、システム企画の進め方、プロジェクト管理やシステム運用管理など目的に応じて選択する。
中小企業の場合、社内に講師を招いて行なうことは費用的に難しいことも多いので、一般から参加を募るオープン研修、セミナーを使うと良い。
実務から離れて学習に専念できるため効果は期待できるが、ものによっては費用が大きいため、慎重に選定したい。

(3)eラーニングコースの受講
研修と同等の内容を期待でき、学びたいところだけを集中的に何度でも受講、テスト、訓練できる。受講者の都合の良いタイミング、場所で受講できることもメリットであり、会社のPCでだけでなく、自宅でも、スマートフォン対応のコースなら通勤途中でも受講できる。
しかし「いつでもできる」という利便性は、「取りあえず後で」という感覚を生み、結局受講しないことにもつながる。eラーニングは、士気が高い受講者であれば大きな効果につながるが、士気が低い場合は受講が進まないため、十分な動機付けとフォローアップが必要となる。

(4)書籍、Webサイトからの学び
安価にスキルアップを狙う場合、学習者の士気が高ければ、書籍は極めて有効な手段である。塾に通わせている子よりも、やる気のある子が教科書と参考書で勉強する方が良い成績だという例が多いのと同じだ。
Webサイトでは、「××とは」というようなことから検索することにより、かなり多くのことが学習できるようになった。また、ニュースなども検索できるので、動きの速い技術動向を追うような場合にもWebでの学習は適している。範囲の狭い特定テーマを、短時間で調査し、ものにする場合に適している。

(5)資格、試験奨励制度
一定の分野についての、関連分野知識も含めた知識習得の証明が、各種資格、試験の合格である。IT関連で言えば代表的なものは情報処理技術者試験であり、IT担当者の目標となる。情報処理試験の他にも、日商PC検定、マイクロソフトなどの民間資格も多い。
IT担当者に限らず、利用者の情報リテラシーとしてあらゆる分野での基礎になるものとして「ITパスポート試験」がある。社員全員が取得すべきと言うには少しレベルは高いが、一つの目標にはなるだろう。IT担当者でもITパスポート試験は最初の段階の目標になる。大手企業では楽天証券が社員全員のITパスポート試験合格を義務づけたとのニュースもある(*1)。
IT関連の試験の中には、合格したからといって業務に直接かかわってくることは少ないものもあるが、IT業務はさまざまなつながりをもっている。長い目で見れば業務上の効果は確実にあるというのが私の実感だ。取得できれば一定の報奨金を出すなどの奨励制度を設けて推進したい。

以上が人材育成の主要手段である。改めて述べるまでもないが、手段を考える前に、目的の明確化と、実行後の成果の確認も含めた計画の策定は必要である。
(2012.5.2 執筆:山田一彦)

*1:ITPro、日経コンピュータ、編集長インタビュー http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20120111/378191/?ST=management