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1月 04

036自社IT活用力を増強する計画策定のポイント

現代の情報化社会に適応し、市場での競争力を高めるために企業のIT活用力(ITを活用する組織能力)を増強するには、IT要員の育成だけでなく、経営者、利用者、外部委託の枠組みも含めた総合的な取り組みが必要となる。自社における取り組みには大きく2つの進め方があり、組み合わせて実施していくことがポイントだ。

□ IT活用力は総合的な組織能力である
一般家庭も含めた社会の隅々にまでITが浸透した現代では、ITを組織的に活用する能力の高低が競争力を左右することも多い。この能力をここでは「IT活用力」と呼ばせてもらうが、IT活用力は単に利用する場面における能力のことではない。
自社に必要なITを、事業の状況や計画に沿って、計画、導入、運用、管理する全局面が含まれる。そこには、計画を立案、承認する「経営層」、導入や運用管理を実行する「IT要員」、「IT利用者」、これらを支援する「外部委託先」が関係してくる。

□ 外部委託、利用者の情報リテラシー、それ以外の組織能力
IT活用力を構成する要素は2種類ある。自社の要員に関するものと、外部委託先に関するものである。
外部委託先に関しては、自社の組織能力を補うものとして、どんな委託先に何を期待し、どのように付き合い、管理していくかがテーマである。自社のビジネス形態、方針、状況に応じて考える必要がある。詳細は別の記事(*1)で考えることにしたい。
自社要員に関連するIT活用力については、まず利用者の情報リテラシーの底上げが課題になるが、これも別記事で考えることとしたい。
以下は、ITの計画、導入、運用、管理をおこなう上での自社要員の能力増強について、進める上でのポイントを考えていく。

【進め方その1:今現在の問題を解決する進め方】
「利用者からの問合せに的確に対応できない」、「運用作業のミスでシステム障害が発生する」など、今現在の問題を洗い上げて、「改善する優先度の高い組織能力」から向上させるアプローチである。

(1)問題の洗い出しと対策テーマの決定
システムの計画、企画、IT資源調達、開発、テスト、プロジェクト管理、システム運用、管理、セキュリティ管理などの業務種別ごとに、問題があると思われる業務を、ブレーンストーミング(*2)などを通して洗い出す。
洗い出した問題は整理、集約して、問題の重大性、解決の緊急性を考慮して対策すべき対象を明確にする。例えば、「ヘルプデスク体制の構築と要員の訓練」、「マスターデータ変更作業時のチェック体制強化」などである。洗い出されたものの中には必ずしも要員スキル向上を必要としないものも出てくるが、それでも構わない。目的は組織のIT活用力向上だからである。

(2)計画の策定と実行
次に計画を策定することになるが、ここで留意したいのは、問題の業務の担い手として、外部委託を活用すべきかどうかも同時に考えることである。例えば、「Linuxサーバー設定変更時のミス削減」というような問題の場合、直近は無理に自社要員でサーバーの運用をしないで、外部に委託するのも選択肢と考えるというようなことである。
計画ができたら、それに沿って自社の要員育成や外部委託の調達を実際に進めることになるが、この場合、担当者も問題意識を感じていることが多いので、比較的円滑に進むことも多いだろう。

【進め方その2:中長期計画と診断による最適化計画】
目の前の問題を解決するのが上記「その1」だが、本当に目の前に見えている問題だけが重要なのか、疑問になることがある。一つの問題を解決すると、以前は見えていなかった問題が見えてくるような場合である。例えば、「サーバーへの設定変更作業は確実にできるようになったが、そもそもの設定変更の値が間違っていることが多い」などである。また、「システム構築は確実に期限通りにできるようになったが、使われない、効果の出ないシステムが多い」というようなこともある。IT関連の業務は部分部分で独立している訳ではなくつながっているので、このような事になるのである。

(1)現状の診断
進め方の2つ目のアプローチは、全般的なIT活用力という範囲での組織能力を診断し、この組織にとって「重要だが弱いところ」を見つけて補強するアプローチである。診断の下敷きとしては、COBITが参考になる。COBITはIT管理についてのベストプラクティス(最適な実践事例)集であり、34のプロセス毎に組織の状況判定に参考となる成熟度モデルなどが収録されている。インターネットからダウンロードできる(*3)。

(2)自社の状況、計画と合わせた対策分野の抽出
診断のための外部のフレームワーク、参考資料を利用する際に注意すべきなのは、例えばCOBITのプロセスに存在しても、自社では重要でないならば「弱い」か「無い」状態でもかなわない、と考えるべきことだ。上に述べた「重要だが弱いところ」の「重要だが」というのは、自社の現在のシステム構成や事業形態、事業の計画に沿ったITの計画を踏まえて判断すべきだろう。例えば、近い将来、現在使用中のオフコンの基幹業務システムを捨ててWindowsサーバーベースのものを入れるとすれば、オフコン管理の技術力は低くてもよく、Windowsサーバー管理の技術力を高めるような計画項目が重要になるのである。

□ 2つの進め方を考慮して進める
上記の2つ目の進め方は少し難易度が高いが、「IT経営」と呼ばれる、IT活用により競争力を高める経営形態を維持するためにはこのレベルまで達することが必要だろう。
とはいえ、少なくとも今現在、目の前に見えている問題を解決しないことには、日常業務の円滑な遂行すら難しくなる。このような場合、まずは第一の進め方を基軸に、第二の進め方を考慮して計画を作るようなアプローチがいいのではないだろうか。
(2012.4.27 執筆:山田一彦)

*1:当サイト記事「中小企業で効果的なIT外部委託の考え方
*2:集団でアイディアを出したり、情報を洗いだしたりするための手法。「批判をしない」、「自由奔放」、「質より量」、「便乗発展」の4ルールを守って進める。
*3:日本ITガバナンス協会のWebサイトからCOBIT4.1日本語版ダウンロードサイトへのリンクがある。http://itgi.jp/download.html