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1月 04

034多品種少量ビジネスはITと適合性が高い

ITには相性のいい処理と良くない処理がある。相性のいい処理なら、ロングテールを取り込んだアマゾンのように、ITを中核としたこれまでにないビジネスモデルの構築が可能である。多品種少量ビジネスもITに相性が良いタイプだと考えられる。

□ ITが実現した「ロングテール」
売れ筋商品を揃えて大量生産、大量販売し、欠品リスクや原価を減らすのはビジネスにおける成功のための常道の一つだが、ITが進歩したこの時代にはロングテールというビジネスモデルもある。
ロングテールというのは、次のような概念である。
縦軸を販売金額、横軸に売上上位商品から順に商品を並べてグラフを作成すると、たいていのビジネスにおいて、上位20%の商品の売上合計額が、売上全体の80%程度を占める。残りの商品の売上はかき集めても20%にしかならないため、生産や店舗に置く対象かどうかを吟味しなければならない。
これに対してロングテールは、売上高ランクとしては下位の商品の販売をかき集めて収益をあげるものだ。例えば書籍など商品数は極めて多い分野で、ITを駆使してコストを下げることで、年に1冊売れるかどうかという商品の販売を多数集めて一定の売上を確保するという概念である。グラフの曲線の右の方がすごく長いシッポのように見えることから「ロングテール」と呼ばれている。
以前書いた記事(*1)でご紹介した東海バネ(大阪府)は、多くの同業他社が避ける多品種微量生産ビジネスをIT活用により高収益ビジネスとした例であり、ロングテールと似たビジネスモデルである。アマゾンはロングテールビジネスで成功した代表的企業である。

□ ITの原始的な活用対象は同種大量計算処理
コンピュータはもともと、同じ計算を大量にするときに時間と人手を大きく省く目的で作られている。かけ算とかけ算の結果を更にかけ算することを100万回繰り返すというような処理である。これに対して、1回1回の計算をする毎に人間が判断するようなもの、つまり非定型処理はITには適さない。出来ないことはないが、プログラムを作りテストするコストを考えれば人間が電卓を使ってやった方が安いからである。

□ 多品種少量ビジネスがITに相性が良い理由
こうしてみると、多品種少量型処理はITに適さないようにも思えるが、「多品種の処理」というのは必ずしも非定型処理ということではなく、書籍の販売で言えばどんな種類の本でも、商品コードと価格が違うだけで処理は定型処理なのである。このような場合、何十万という品種があり、かつ、処理の件数が多くて人間がやると大変な処理でも、ITならば1品種の場合と大差なくこなせるのだ。
「少量」ということを考える。少量というのは1種類の生産や販売が少量ということであり、例えば、1つの注文で1千万円を多量とすると少量は1000の注文で1千万円ということである。1日に1つの注文しかなければ、在庫引き当てや生産手配、配送手配をしたとしても人手でもこなせるが、1000の注文となると多くの人手が必要となる。この場合、IT導入は大きな効果を生む可能性が高い。

□ ITとの相性は無関係の多品種少量ビジネス
多品種少量ビジネスでも、品種が変わる毎に生産工程で人手による段取り替えが発生し、ITでの効率化が望めない場合や、品種ごとの特殊処理が多いうえに処理基準の変更が頻繁に発生するような事務処理の場合は、結局、非定型処理と同じになるためITの適合性は高くない。

□ 自社ビジネスの特色を見極めよう
東海バネの場合、販売促進から生産手配まですべてITがこなすことで多品種微量のデメリットを克服している。すなわち、Webサイトでの集客、Webサイトからの注文、Webサイトからのリピート注文、基幹システムへのデータの自動連動である。生産についてはリピート注文に迅速に対応するために、過去の図面がすぐに引き出せるような情報システムを配備している。
このように一通りのプロセス全体でIT化をしたことが効果を生むのであり、途中で人手が大きく入る場合にITの効果が少なくなることは、是非、押えておいて欲しいポイントである。
(2012.4.23 執筆:山田一彦)

(*1) 【事例研究】営業利益17倍を実現したIT活用