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1月 04

033中小企業で効果的なIT外部委託の考え方

IT要員の数、要員の専門性が高く、何より総体としてのITパワーが大きい大企業と、そうではない中小企業ではITの外部委託に関する考え方も異なってきて当然といえる。中小企業におけるITマネジメントの特徴をとらえた外部委託のありかたを考えてみる。

□ 中小企業、小規模組織におけるIT組織の特徴
IT要員が10人以上いるような組織と、それよりも規模が小さく、場合によっては専任の担当者がいない組織の違いを考えてみよう。

(1)守備範囲にそれほどの違いはない
小さな組織とはいっても、生き残っていくための効率化など、最低限のIT化はしなくてはならないし、顧客や銀行などの取引相手に合わせたIT化はしているところが大半である。もちろんシステムの機能性や独自仕様の整備、耐障害性など、ITの質としては異なるところも多いが、基幹システムから職場のグループウェアに至るITの守備範囲は大組織と小規模組織とではそう大きくは変わらないのである。

(2)要員スキル面での違い
一つの分野、例えばネットワークでも、専門の要員で担当できるのが大組織だが、小規模組織では一人の人間が他の分野も担当する兼務であることが多い。また、専門教育を受けている度合いも異なるだろう。小規模組織ではネットワークのスペシャリストなど、先ずいないのである。

(3)要員数の違い
システム規模が大きいことから、大組織では複数名で一つの分野を担当することも多いが、小規模組織ではそうはいかない。「基幹システム担当者は1名、しかも他の分野も兼務」などは当然の状態であり、企画、開発からシステム運用、利用者からの問い合わせ対応も一手に引き受けていることが多い。

(4)IT要員比率は小規模組織の方が高い
総従業員数に対するIT要員の比率は、逆に小規模組織の方が高い(*1)。平成21年度でみると、5001名以上の企業では1.9%なのに対して、100名以下の企業では9.4%に達している。大規模企業にはスケールメリットが働いているということである。

□ ITの外部委託を考えるポイント
以上の違いを踏まえて中小企業で外部委託する際に考慮すべきポイントを考えてみよう。

1.外部委託は避けられない
「ハードウェアだけを購入してあとは社内で構築」ということは基本的に不可能である。会社の経営方針、経営計画に即したIT活用を、外部の力を最大限に引き出しながら進める以外に道はない。外部委託を効果的に行なうためのノウハウは、中小企業のITにおける最重要事項といえる。

2.要員のスキルは浅くとも幅広く、常識的判断力や業務知識が豊富である必要
技術の専門性をITベンダーのエンジニアなみに高めることまず不可能である。システムの導入時においても、技術的な詳細はITベンダーに任せ、自社要員は業務要件を実現するための構想に基づく判断基準で思考できる能力が要求されるのである。ただし、ITベンダーと会話できる程度の基本的な技術知識は当然必要だ。
世の中には、コンピュータが三度の飯よりも好きな「パソコンおたく」のような人がIT担当にふさわしいと考える人も多いが、これを考えれば真逆で、経営方針を理解し、職務としてITのあるべき姿を常に考え、ものごとをバランスのとれた思考でこなせる素質、能力の持ち主が小さな組織であるほど必要なのである。

3.できることは何でも社内でやり、ノウハウを蓄積する
大組織では、勤務形態、コスト、要員のコア業務集中などを考えて、自社要員でもできることを外部委託するケースが多い。ヘルプデスクやシステム運用オペレーションなどが代表的なものだが、小規模組織では業務量が少ないため、外部委託するとコスト面で成り立たなくなることが多い。
したがって、社内にあるスキル資源(要員)でできることは何でもやるようにしなければならない。そのためには、「たまにやること」が的確にできるように、しっかりと手順やノウハウを蓄積する必要がある。「そんな手間を掛けなくても、担当者の頭の中にだけあるのが、もっとも効率的じゃないか」という意見もあるだろうが、これでは担当者の休暇や退職時に仕事がまわらなくなるリスクとなる。ここが一番苦しいところだが、コツコツと手順を文書化して、いざというときに別な人でもできるようにしながら、幅広い業務をこなせる業務体制を確立したい。

4.要員育成、企業成熟度の発展段階を意識する
上記1から3はあるべき姿に向けた方向を示しており、今日からすぐできることを挙げた訳ではない。当然、発展段階があり、一歩一歩、方向をあやまらないで進んでいきたい。
そのための途中段階としては、社内でしたほうがいいことでも外部に委託することはやむを得ない。ここで大切なのは、必要な時に外部の力を借りて乗り切ったら、次は自社要員だけでもできるようにノウハウを蓄積することである。そのための組織作り、カルチャー作りは経営者の役割である。
(2012.4.20 執筆:山田一彦)

*1:平成21年度情報処理実態調査(経済産業省)から計算した