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1月 04

031しなくてもいいITの外部委託は何か

一般企業では程度の差こそあれ、IT関連業務の外部委託が不可欠である。しかし、なかには外部委託をすべきなのにしない場合や、する必要のない外部委託をしているケースもある。外部委託の形態、目的と、中小企業における適切なIT外部委託の考え方を整理してみる。

□ 外部委託に関する失敗例、成功例
2011年度IT経営力大賞で、経済産業大臣賞を受賞したメトロール(東京都立川市)は、現在の生産管理システム導入の前に、一度、システム導入に失敗していたという。数千万円かけたシステムがほとんど役に立たなかったらしい。そこで経験豊富なITコーディネータに、新たなシステムの調達と開発の指導を仰ぐことで、見事に成果をものにすることができた。
この例は、情報システムの調達、開発の知識獲得とプロジェクトコントロールという外部委託をしなかったために失敗し、その次の機会では外部委託をしたことで成功した例である。この場合のようなコンサルティング的要素は、外部委託すべきかどうかの判断が難しく、一度失敗した経験がないと外部委託する決断がしにくいものである。

□ 外部委託業務と契約形態の例
IT関連業務のなかで外部委託が良く行なわれる業務と成果、契約形態を以下に挙げてみる。

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このほかに、自社の要員のマンパワー不足を補う場合には派遣契約のよる要員調達も行なわれる。

□ 各対象業務に関する外部委託の適合性
情報システムの導入、特に基幹システムのような大きなものは、企業にとって5年とか10年に一度か二度しかなく、社内に経験、知識、技能が豊富な要員を保有しておくことは難しい。また、システム開発の際は、プログラム作成とテスト時には、一時的に多数のエンジニアが必要となることから、これを外部委託するのは理にかなっている。
システム運用、管理についてはどうか。こちらは人数のピーク性も少なく、社内の要員で対応する方が業務の習熟やコストの面で有利になる。
悩ましいのは計画策定や要件定義、IT資源調達、プロジェクト管理などだ。
これらを外部委託しようとすればいわゆるコンサルティング契約ということになる。しかし、社内の要員スキル、経験が十分であれば外部委託をする必要はなく、力のある大企業では、ほとんどの場合、自社でおこなう。また、これらの業務は書籍や研修からでもある程度の知識を習得することができるので、優秀な社員が勉強し、苦労しながらやることでこなせることもある。可能ならばその道をとることが望ましい。

□ 外部委託を行なう3種類の目的
ここで外部委託を行なう目的について整理してみよう。外部委託は大きく三つ異なる種類の目的で行なうことが多い。

(1)自社にない専門性の獲得のため
(2)「コア業務」に自社の人的資源を集中させるため
(3)コスト削減のため

(1)の場合、その専門性が自社にあるかどうの判断は難しいが、自社の状況に応じて判断する。(2)の場合は、自社要員でも能力的にはやれるが、自社要員は自社において必要性のより高い業務に従事させるために、外部委託できるものはするということである。「自社でやる必要性の高い業務」が会社の競争力に結びつく場合に、この選択をするケースが多い。(3)は(2)と似ているが、純粋にコスト削減を考えるものだ。

□ 「しなくてもいいITの外部委託」は何か
基本的には外部委託の三つの目的に沿って検討対象の業務を判断するということが、不必要な外部委託をしないためのポイントだ。そして、自社にないかもしれない専門性でも、優秀な社員の存在などがあり、自社でやり抜ける自信があればコンサルティング的業務でも自社で取り組んでみる、というのが望ましい形である。
ただ、冒頭に上げたメトロールの例を考えれば、初めての難しいプロジェクトについては、余り無理をせず、専門家と成功体験をともにすることで、社内にノウハウを蓄積して次回以降は自社でできるようにする、というのも堅い選択肢である。
(2012.4.16 執筆:山田一彦)