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1月 04

029ITの震災対策~実感としてのデータセンター移設効果

企業の災害対策はBCM、事業継続管理として総合的に考えなければならないが、ITに関しては即効性のある施策として、データセンターへのサーバーの移設がある。実際に東日本大震災前に移設が完了したケースでの効果を確認しつつ、検討のためのポイントを解説する。

□ BCM、BCPの一環としてのデータセンター
東日本大震災、原発事故を経て、災害とその被害をあらかじめ想定することの難しさが明らかになった。企業における災害対策を考える場合、やはり何よりも人命が優先であることに変わりは無いが、ここでは事業を継続する上で不可欠な要素の一つであるITの対策、その中でもデータセンターの活用について考えてみたい。
某社(本社:東京都)では、東日本大震災の8ヶ月前に、自社ビルのコンピュータルームから、商用データセンターへの全サーバーの移設を終えており、被害は皆無であった。かねてより自社コンピュータルームでは設置スペースが限界に近づいていたことと、同じビルに飲食店があることから、火災のリスクを考えてデータセンターへの移設を実施したのである。

□ 商用データセンターとは
商用のデータセンターとは、専用のサーバー設置スペースを保有し、サーバーを装着するラック単位、または1/2ラック単位で利用者に貸し出すサービスである。地震、洪水、津波、火災などの自然災害や、不正侵入、盗難、破壊行為などの脅威にも強い設計となっているものが多い。東日本大震災の際、仙台にも商用データセンターはあったが、被害はなかったという。当然だが、首都圏のデータセンターでも被害の報告はない。
商用データセンターの特長は建物構造だけではなく、電源供給の複数系統化、自家発電の装備、通信回線の引き込みなどにもある。

□ 某社のデータセンター移設で良かったこと
某社におけるデータセンター移設で良かったことは、地震の揺れへの対応が難なくできたこともあるが、原発事故による計画停電から免れたことである。元のコンピュータルームがあったビルは東京の西部に位置しているが、この地域は計画停電の対象となっており、平日、システムを稼働させなければならない時間帯に何度も停電に見舞われている。

□ データセンター移設検討のすすめ
首都圏をはじめ大地震が想定されている地域は多いが、想定外のことが起こって損害が発生するならまだしも、想定内事象にも対応できないようでは困る。例えば、東京直下型地震の震度7は想定内の事象である。工場の移設は簡単にはできないし、いくら津波が予想されていようと、営業所をその地域から移転させるもの難しいだろう。それに比べれば、データセンターの移転は、費用はかかるが確実に実行ができる災害対策の一つである。

□ データセンター選定のポイント
某社のデータセンター移設を検討した経験を踏まえていえば、以下のようなポイントが重要ではないかと思う。

(1)耐震構造
専用データセンターでも建築時期によって、想定震度が6の場合と7の場合がある。新しいデータセンターの場合は、免震構造や制震構造で建築されていることが多く、できればこういうところを選びたい。そうでない場合でも、サーバーの設置スペースが揺れを吸収する構造になっている設備のものがあり、そちらの方が安心である。

(2)立地
津波、洪水、土砂崩れなどの危険性がない方が良い。ちなみに東京湾では2mを超える津波の危険性は低いとのこと(*1)だが、判断するのは難しいと思う。また、原発も含めて近隣に事故の可能性のある施設がある場所も、できれば避けたい。
ただし、立地について非常に重要な点がある。IT担当者のオフィスからの距離である。サーバーの増設、ネットワークの構成変更、バックアップテープ装置の不具合対応など、何だかんだとデータセンターに出向かなければならないことも多い。システム停止などのときにITベンダーに行ってもらわなければならないケースも考えれば、最大でも片道2時間以内の場所でないと長く使っていくのは難しいのではないかと思う。

(3)電源引き込み、自家発電
電源引き込みが2系統以上でないと、途中の変電施設の落雷などによる故障で停電に見舞われるかもしれない。また、自家発電設備で24時間以上の電力供給ができるようであれば、計画停電対象地域であったとしても問題ない。

(4)料金
料金は通常、初期費用と月額費用からなり、契約後1年間は解約できないなどの条件がつくこともある。立地や設備の善し悪しによって価格も変わってくるが、1ラック、月額で15万円~30万円というところだ。

(5)選定基準
主に上記を勘案して選定するのだが、やはり、難しいのはどのような災害を想定するかだろう。単純計算では答はでないので、会社のBCM、BCPと整合性を合わせた価値基準を考慮し、最後は経営判断で決める。

□ データセンターを使わない選択
近隣にデータセンターがない、または、サーバーの数が少ないなど、データセンターを利用するという選択がしづらい場合もある。
このような場合は、以下のように考えるといいだろう。
1.サーバーはサーバーラックに装着する。サーバーラックは、動かないように床にボルトで固定する。
2.サーバーのバックアップ機を別な建物に、上記1と同様に設置し、本番用のコンピュータルームが被災しても業務がすぐに復旧できる体制を敷く。

上記2については、データセンターに移設したとしてもできればやっておきたい対策ではあるが、データセンターの被災可能性とコストとを勘案して判断していただきたい。
(2012.4.11 執筆:山田一彦)

(*1) 「東京湾の津波、大半は1~2メートル 関東大震災では津波被害はほとんどなかった」 (日経新聞Web(2011/5/2 7:00))