«

»

1月 04

021中小製造企業はダイレクト小売でチャンスをつかめ

アパレル業界では、ユニクロのようなSPA(製造小売)をおこなう企業が伸びている。製造小売は顧客ニーズの製品反映に柔軟であることと、中間流通がないため低価格での販売が実現できることから、一定の条件下では競争力が高い。アパレルに限らず、自社販売網のない中小企業でもインターネットによる直接販売をすることで海外展開も可能なビジネスモデルを構築できる可能性がある。

□ IT経営力大賞2012受賞企業、メトロールの海外直接販売
先週の金曜日に、経済産業省が主催するIT経営力大賞2012の記念式典を観覧した。経済産業大臣賞を受賞した東京立川市の精密制御機器製造業、メトロール松橋社長のショートプレゼンに感銘をうけた。
メトロールは主に自動車メーカーなどに部品を提供しているが、交換部品のダイレクト販売も、英語、中国語、ドイツ語のWebサイトで行なっている。始めようとしたきっかけは、米国では当社の部品が15倍の価格で売られており、注文から納品まで数ヶ月もかかっていると知ったことだという。決済は円建てでクレジットカードのみ。Web販売は好調で、不況知らずという状況のようである。

□ 製造業のダイレクト販売
製造業のダイレクト販売といえばデルの事例が有名だ。IBMが約3000ドルで売っていた製品は600~700ドルの部品で出来ているのを知ったことから着想を得て、学生だったマイケル・デルが起業して製造し、直接販売をすることで築いたビジネスモデルである(当サイト別記事でも紹介済*1)。
ダイレクト販売はインターネットを使わない店舗型販売でも業績を伸ばしている。メーカーズシャツ鎌倉やユニクロは、アパレル業界でSPA(製造小売)と呼ばれるビジネスモデルである。自社で企画、製造し、販売をする。メーカーズシャツ鎌倉は高品質シャツを直営店でリーズナブルな価格で販売する。93年にコンビニの2階に一号店を開店して起業、現在では売上高30億円超と成長した会社だ。ユニクロはご存じのように既に世界一を視野に入れて海外展開を加速している。そのほかに無印良品などもあり、SPAはアパレル業界では、成長する業態の主役になっている。

□ 現代は中小企業のインターネット販売に機会あり
従来、製造業は製造に特化し、顧客へ商品を販売するのは卸売りや小売といった流通業というのが業種の区分であり、最終消費者への流通手段を持たない中小製造業者は、流通業者に依存せざるを得なかった。ベンチャー企業についても同様である。
しかし、現在、ダイレクト販売はインターネットのWebサイト、クレジットカードなどの決済手段、宅配輸送の充実によって、そう難しいことではなくなった。販売店などでなければ難しかった、製品開発のための顧客ニーズ収集もWebサイトやフェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用することで容易になってきている。現在は、中小企業にとって大きなチャンスがある時代なのである。

□ ダイレクト販売で成功するための課題
しかし何でもかんでもインターネット販売すれば良いかというとそうではない。インターネット販売に参入しても、失敗する事例が多いのも現実である。
中小企業、ベンチャー企業がダイレクト販売をして成功するための課題を挙げる。

第一に、製品自体に競争力が必要である。競争力は品質と価格からなるが、どこででも手に入るようなものが少しくらい安い価格では、顧客は振り向いてくれない。メトロールの場合は、トヨタなどに既に採用されている品質の良い部品が、ダイレクトなら低いコストで買える。ユニクロやメーカーズシャツ鎌倉も製品品質と価格に優位性がある。いずれもたゆまぬ努力の積み重ねの結果である。

第二の課題は、信用をいかにして獲得していくかである。店舗があれば見て、触って、確かめることが可能だが、インターネットではそうはいかない。顧客が「よさそうだな」と思っても、一方で「本当にここに注文して大丈夫だろうか」という不安をクリアできなくてはならない。デルは無名のころ、気に入らなければ無料で返品可能として販売している。同様な販売方法をとっている物販サイトは現在でも多い。

第三は、仕様と価格の明示である。この点でも店舗があれば問題は無いのだが、無い場合は難しい。また、サービス的な要素を持つものも仕様の明示が難しい。仕様、価格を文章で伝えるほかに、ふんだんな写真、動画、事例、顧客の声などで製品のイメージを伝える努力が必要である。

第四は、広報である。これはインターネットの場合はまず、SEO(検索エンジン対策)ということになる。IT経営力大賞の受賞やメディアに取り上げてもらうなどのパブリシティも費用がかからない手段だ。SEO、パブリシティ、インターネットの自社サイト、ブログサイト、SNSでの宣伝を組み合わせるといった努力は、インターネットを使った広報で成功するための条件である。

*1 当サイト「顧客効用と価格のギャップへの気づきはビジネスモデル見直しの第一歩」
(2012.2.29 執筆:山田一彦)