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1月 04

016アナログも重要-IT資源調達で調べるITベンダーの潜在能力

情報システムを導入する際のIT資源調達は、開発や導入サービスをしてもらうITベンダーを決定する重要なプロセスである。提案された機能や価格だけでなく、これまで取引が少なく熟知していないITベンダーの潜在的な遂行能力を適切に評価しなくてはならない。

□ 独自開発やアドオン開発のリスク
既製品ソフトウェアであるパッケージソフトの場合は、あらかじめ出来上がったものをデモや試用という形で確認してから導入を決定できる。しかし、企業の独自業務仕様を実現する独自開発や、パッケージへの追加開発などでは、ある程度出来上がってからでなければ実際のものは確認できず、導入を決める段階では「仕様」という机上の形となる。
独自開発やアドオン開発においては、納品されたシステムの品質や性能が低く改修が非常に多い、本番後も不具合が多い、あるいは、納品期限に遅れる、といった問題が起こりがちである。そのほかにも、想定しない追加費用の発生、受託企業の倒産、取引上のトラブルが発生、というようなリスクもあり得る。

□ ITベンダーの潜在的プロジェクト遂行能力の評価でリスクを低減する
このようなリスクは、ユーザー企業が要件定義を適切に提示する、契約(発注)前に契約条件を合意しておく、といったIT資源調達の基本を守ることで大半は回避できる。しかしそれでも、提案してきた企業が提案書どおりにプロジェクトを完遂できるのかどうかについては、情報収集、評価をして、少しでも確実性を高めることが必要なのである。
このようなことは一般の取引でも「取引先の与信」と呼ばれており、新たな取引を開始する場合には必要な手続きとなっていることが多い。取引の種類によって相手評価のための基準は異なるが、登記簿謄本、直近3期分の決算書といった基本的項目のほかに、その取引業務の実績を評価する。

□ システム開発取引の際の評価事項
システム開発取引先の場合も同様だが、実績のほかにも評価しておいた方がいい内容がある。これらを事前に確認するか、またはRFP(提案依頼書)に含めて提示を要求する。
以下は、主なITベンダーの評価のための項目である。

(1)開発の実績
・同様な業務、同様なシステム方式における実績
・件数、実名の事例、受注総額
・パッケージなら出荷ライセンス数、販売相手社数

(2)保有資格
・開発系資格:ISO9001(品質マネジメントシステム)、CMMIの認証取得レベル、経済産業省システムインテグレータ(SI)登録
・運用系資格:ISO20001(ITサービスマネジメントシステム(ITSMS)適合性評価制度)、経済産業省特定システムオペレーション(SO)企業等認定制度
・セキュリティ系資格:ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)適合性評価制度)、P(プライバシー)マーク

(3)組織内要員の資格保有者数
・業務系:中小企業診断士、税理士、販売士など様々
・システム系:情報処理技術者の各試験合格者、Oracle、マイクロソフト、Ciscoなどの民間資格、ITコーディネータなど

(4)今回担当を予定しているプロジェクトメンバー
・プロジェクトマネージャー:最重要。できれば実際に提案を説明してもらう。
・プロジェクトメンバーの保有資格

□ 重要なプロジェクトマネージャーの評価
以上のような項目に該当するものを提示してもらうと良いだろう。重要度は、そのときのプロジェクトによって異なるが、常に重要度が高いと考えられるのは、(1)の実績と、(4)のプロジェクトマネージャーである。
なぜプロジェクトマネージャーの評価が重要かというと、システム開発プロジェクトは、ITベンダーが組織力を結集するとともに、ITベンダーと顧客企業側とのコミュニケーションが完璧にできて初めて成功裏に終わるものだからである。プロジェクト期間中は、文書での情報やりとりのほか、口頭での連絡なども含めて極めて多様な情報交換が行なわれる。それをITベンダー社内のチーム、関係部署の協力を得ながら上手く進めるというというのは非常に力量の問われる仕事なのである。
これにデキる人があたるのとあたらないのでは、システムの成果はもとより、顧客企業側の満足度も変わってくるのだ。名の通った大企業だから常に良いプロジェクトマネージャーが担当するとも限らない。顧客企業側で評価する必要がある。

□ アナログ的な評価も重要
プロジェクトマネージャーに関する評価は、資格、実績などでの評価に加えてアナログ的な評価も重要である。できれば発注前に何度も接触する機会を設けて、コミュニケーションの的確さ、誠実さ、肉体的精神的タフネス、持ち帰り事項への対応なども評価したい。付け加えて言うならば、人間には相性というのもある。顧客側リーダーとの相性が悪くない、というのも重要な評価項目といえる。
(2012.3.16 執筆: 山田一彦)