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1月 04

006「店主けがのため当面休業します」。担当が病欠、退職しても業務をまわす「業務標準化」は業務存続の基本要件

会社で、業務処理ノウハウや情報が共有化されておらず、特定個人への仕事の依存度が高いことを「属人化」という。属人化解消の他にも、コストダウンなど多くのメリットがある業務標準化は、中小企業でも、手のつけられるところから進めたい。

□ 業務の属人化は予期せぬ業務レベル低下を招く
昼食で、よく行く店の扉を開ける。おばさんの笑顔に迎えられ、「今日は何にしましょう?」と、いつものペースに乗せられる。気の利いた個人経営の飲食店は、接客も味も心がこもっていて、マニュアル化が進んだファミリーレストランよりも心地よく、美味い。
しかし、時におやじさんが入院したりすると、味はガタッと落ちてしまう。個人経営の場合、特にこのような飲食店の場合は業務の標準化は難しいし、標準化しない方がいいこともある。しかし、読者の皆さんもご存じのように、特定個人への仕事の依存度が高い「属人化」は、その人の病欠や退職が業務遂行の危機となるリスクをはらんだ状況である。

□ 属人化を回避する業務標準化は3段階で進める
個人の資質が差別化要素の場合については後で述べることとしたいが、業務の属人化を回避するには、複数の人が同じことを、同じようにできるようにする「業務の標準化」が必要である。
業務の標準化は、ごく簡単なことや逆に極めて高度なことを除けば、一般的には次のような手順により進める。
(1)業務手順や知識の整理と文書化
頭の中の知識や、散在するメモなどから業務マニュアルや業務フローを作る。このとき、非効率だったり、ミスを犯しやすかったりする手順や書類様式の整理もするとよい。
(2)トレーニングと認定
新たに担当させる者に、業務マニュアルや業務フローを使って、必要な知識と手順を伝達し、業務としての品質や生産性が確保できるように訓練する。出来るようになったかどうかの認定も必要である。
(3)並行運用
元の担当者が病気にならなくても、時折、担当を交代して、本番で慣れさせる。このとき、初級者の目による業務マニュアルやフローの改善にもトライさせるとよい。

□ 業務標準化は応用次第で効果が大きくなる
業務標準化は、次のような効果、波及効果が期待できる。
A.担当者の固定化回避
⇒特定個人の病欠、退職による業務リスクの回避
⇒コストの低減(賃金の安い人の活用可能性がある)
⇒有給休暇ローテーションの容易化
B.コストや成果分析精緻化
・業務の部分部分で実施時間や件数を計測できれば、次の分析が可能になる。
⇒業務の生産性分析からのコストダウン
⇒成果の計測から人事評価への応用
C.業務改革検討の資料となる
・個々の業務遂行から少し上位の業務プロセスを整理することで、経営課題解決検討の際に活用が可能となる。
上記B、Cは現在の「属人化」回避のためのAを、より高度に推進していく先にある。実施のためには、やや難易度が高い内容であり、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)に近い内容だ。
まずは、Aを実現するために、必要な分野でのマニュアル作成、業務フロー作成を計画的にすすめて行きたい。

□ 差別化要素が個人の資質にあるように見えても、見極めは必要
さて、個人の資質が競争力の源泉である差別化要素の場合の話である。どうすればいいのだろうか。
団塊の世代のサラリーマンが一斉に定年退職を迎える諸問題を象徴する「2007年問題」という言葉があった。実際には定年の延長、嘱託採用でしのいでいることも多いようだが、一般的な業務標準化のほか、社内マイスター制度などによる技術伝承の制度化、ITを駆使した職人芸の映像や知識データベース化など、様々な取り組みが行なわれている。
もっとも、芸能の世界では「芸は一代のもの」という概念が一般にも広く認知されており、それは産業界における業務標準化とは別な話といえる。「××屋初代の味」は、息子の代には変わっても、それはそれでいいのではないだろうか。要は、個人芸にすべきでないノウハウは何であるかを見極めることが重要なのである。
(執筆:山田一彦)