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1月 04

005「銀のさら」にみる「買わせ方」で差別化するビジネスモデル

宅配寿司「銀のさら」を展開するレストランエクスプレスは、ポスティングと宅配というビジネスモデルで現在の宅配寿司トップの地位を築いた。寿司のように、商品としては競合と特別な違いの無いビジネスで、より多く販売するための目の付け所を考えてみたい。

□ 銀のさらのビジネスモデル
私の手元に銀のさらのメニューがある。我が家のポストに投函されたものだが、紙質も印刷も写真も上質で高級感がある。銀のさらはレストランエクスプレス(本社:東京都港区)が展開する宅配寿司のトップブランドである。メニューやチラシを各家庭のポストに投函する「ポスティング」で広告し、電話やインターネットで注文を受けるビジネスモデルを基本としている。

□ 寿司の宅配を始めたら注文が急増
TBSテレビ「がっちりマンデー」に出演したレストランエクスプレスの江見社長が語ったところによれば、創業当初はサンドイッチを宅配していたそうだ。あるとき寿司の宅配を思いつき、商品を寿司に変えたところ、注文が急増。「何で今までやらなかったのだろう」という気持ちだったという。銀のさらの寿司が特別安いわけではない。大人向け一人前のにぎりで最も安価な薩摩が980円(※2012年1月現在)で、街の寿司屋より何割か安いか同等といったところだ。寿司桶は街の寿司屋と同じように回収に来るもので、使い捨てのプラスチック容器とは違い、来客時にも出せる。
しかしそれにしても、銀のさらの顧客はなぜプロの職人が握る街の寿司屋ではなく銀のさらへ注文するのだろうか。

□ アスクルもポスティングと通販で成長
食品ではないが、ポスティングと通販というビジネスモデルで成長した会社にアスクル(本社:東京都江東区)がある。チラシはカタログ無料請求のFAX用紙になっていて、顧客がFAX送信をすると数日後には分厚いカタログが送られてくる。顧客はFAX、インターネットから事務用品を注文して、翌日には手元に届くという仕組みである。

□ 銀のさらとアスクルに共通する、顧客からみた利便性
銀のさら、アスクルに共通するところを顧客から見ると、①自宅や自社に居ながらにしてメニュー(カタログ)を見て商品を選ぶことができる、②注文は電話、FAX、インターネットと、これまた居ながらできる、③商品の受け取りも宅配なので居ながらにしてできる、というところだ。
寿司そのもの、事務用品そのもので差別化をしている訳ではないが、顧客の「商品情報の受取り方、選び方、注文のし方、商品の受け取り方」が競合とは全く異なる差別がなされているということである。

□ 銀のさらに注文する理由
しかし、寿司については、元々、電話で注文を受けて宅配する「出前」があったはずである。寿司のグレードも、価格も、寿司桶も街の寿司屋と銀のさらでは重なる部分が大きい。なぜ銀のさらは、街の寿司屋から顧客を奪うことができたのだろうか。
ここからは、私の生活実感からの推測が入るが、①食欲をそそる写真入りで、様々な商品が価格と一緒に載っている綺麗なメニューを、たびたびポストに入れてくれる寿司屋はほとんどない、②刺身は鮮度が命だが、銀のさらはチラシやメニューをみると商品の回転が速そうな感じがするため、鮮度が良さそうなイメージがある、ということではないだろうか。

□ 模倣されやすいビジネスモデル
ところで、顧客の「商品情報の受取り方、選び方、注文のし方、商品の受け取り方」で差別化するモデルというのは模倣されやすい。現に、銀のさらにもアスクルにも追随する競合が多数現われている。両者とも、トップに立ったとはいっても、常に息の抜けない競争の渦中にあるのである。これからの動きにも注目したい。

□ がんばれ! 街の寿司屋さん
私は寿司が大好きだ。街の寿司屋さんにとっては、宅配寿司に加えて回転寿司の隆盛もあり多難な時代だが、職人の握る寿司が無くなってもらっては困る。是非、新しい競争時代に適応して、盛り返してもらいたい。
(2012.2.15,執筆:山田一彦)